10月27日、宅建協会下関支部の研修会が行われました。下関市の関係各部署の職員の方々にお越しいただき、「災害に備えて」という演題で各種ハザードマップや新規洪水浸水想定区域などに関する内容を解説して頂きました。弊社の7月のブログ記事「水害ハザードマップの種類について リスク情報の周知義務」でも触れましたが、災害などのリスク情報の提供は不動産会社の義務でもあります。その義務を果たすべく、災害に関する理解を深めることを目的にした研修会です。
当日は三密を避けるなどコロナ対策を講じた会場に、多くの宅建協会下関支部の会員が参加し、災害に対する危機感が共有されている状況を感じました。ここで深めた理解はそれぞれが不動産取引の場において活かされることになると思います。
貴重な時間を割いて研修会にご協力いただいた下関市のご担当者の方々にはとても感謝しています。これからは宅建協会下関支部の一員として、防災についての意見交換もできる体制を整えられるように尽力したいと思います。そこで今回の研修内容で気になった点を指摘したいと思います。
地震に関する情報についてです。下関市では地震防災マップとして「揺れやすさマップ」を公表しています。菊川断層地震、下関市庁舎の直下地震、東南海・南海地震の3つを想定される地震とし、それぞれの地震で自分が住んでいる地域がどの程度揺れるのかを「震度」として表現した地図です。あわせてこの3つの地震で想定される建物被害の分布状況を相対的に表現した危険度を表す「危険度マップ」も公表しています。その「揺れやすさマップ」と「危険度マップ」は、避難所の場所が示されていないので、地震で被災した場合どこへ行けばよいのか、このハザードマップではわからないのです。
令和2年2月改訂の下関市地域防災計画(資料編)を確認すると、市内全域で指定避難所は182箇所あり、それぞれ災害種別(地震、津波、高潮、土砂災害、洪水)の適合性の有無が示されています。公共施設だけでなく民間施設も含まれるのですが、耐震性に問題のある施設や浸水想定区域にある施設などがあるため、被災者は災害の種類でどこに避難するかを考えなければならないのが現状です。
当日の資料に、菊川断層地震により川中地区が震度6弱の揺れに見舞われた場合の被害想定が示されたものがありました。下関市地域防災計画の前提となる予想される災害です。想定される被害程度は、人的被害で死者202人、負傷者1,600人、建物被害で全壊3,500棟、半壊11,400棟、避難者が46,000人に上るものでした。地震は突然襲ってきます。いざ被災した場合、自分がどこに避難したらよいのか理解している人が下関市ではどれだけいるのでしょうか。近所にある公民館が地震の場合使用できないと理解している人がどれほどいるのでしょうか。
正直言って下関市は地震に対する備えが不十分です。下関市では地震が起きないものと考えられているようです。万が一、上記の様な被害が生じた場合、全ての指定避難所の収容人数は合計51,306人、そのうち地震で使用不可能な施設の収容人数の合計4,747人を引くと46,559人となります。ぎりぎり足りているように見えますが、災害時の混乱した状況で避難所ごとに避難者の割り振りを行うことは現実的には難しいと思います。
避難所での避難生活はとても厳しいものになりそうです。ただでさえ現在は感染症と自然災害の複合災害に備えなければならない状況です。3密を避けられない劣悪な環境での避難所生活は災害関連死につながる恐れがあります。またペットと生活する方々にとっても、同行避難が推奨されていますが、下関市では避難所の居住エリアにペットを連れていくことは出来ません。救援物資もペットフードなどは遅れるようなので、最低5日分の備蓄は自分で準備しなければいけません。解決すべき問題は山積みです。
避難所運営は行政だけではなく避難者全員で協力しなければ成り立ちません。災害が起きればお上が何とかしてくれると言った考えは時代錯誤です。災害に備える心構えひとつで、発災後の人生が大きく変わります。防災意識を共有するためにも、このような研修会などを続けることは重要だと思います。 R.02.10.29