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居住権を保障する社会政策の必要性

 令和元年10~12月期の実質国内総生産がマイナス成長となった要因は、消費税増税による個人消費の想定を超える落ち込みでした。そんな低迷する経済状況に追い打ちをかける新型コロナウイルスの感染拡大。内定の取り消しやトヨタ自動車が国内工場の生産ラインを休止するなど、リーマンショック以上の景気後退が現実になりつつあります。

 

 雇止めや派遣切りによって社員寮を追い出された人々が集まった「年越し派遣村」のニュース映像が脳裏をよぎります。憲法で保障された生存権を脅かす住まいの喪失が、ふたたび繰り返されることになるのでしょうか。2009年当時の日本が直面した住宅問題の状況を検証し、そこに至るまでの歴史的分析を行った書籍があります。

 

 【 居住の福祉 著者:本間義人 発行:株式会社岩波書店 】

 

 以下、前書きの一部を引用したいと思います。

 

 【住宅政策の役割とは本来、国民の人権としての居住権を保障するうえで社会政策の一環として展開されなければならないはずです。しかし日本では、それが経済政策を補完するものとして位置づけられ、かつ展開されてきたのです。とくに高度成長期以降の小渕、橋本内閣が景気対策として住宅政策を利用した様相には目に余るものがありました。景気浮揚につながらない施策は無視され、景気刺激に直結する世帯向けの持ち家政策だけが重視されました。】

 

 かつて住宅に困窮する勤労者の為の住宅として整備された公団住宅。「礼金なし、仲介手数料なし、だから初期費用がおさえられる」などと最近派手に宣伝しているUR賃貸住宅のテレビCMを見る度に、日本の社会福祉政策の衰退を実感します。同時に「年越し派遣村」当時の入居拒否問題を想起させられ、幾ばくかの嫌悪感を覚えます。

 

 近々リーマンショック時を上回る緊急経済対策が策定されるそうです。経済対策だけでなく憲法で保障された国民の人権が守られる施策が実施されることを切望します。     R.02.03.29