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命を守るためのメッセージ

 【「震度7 何が生死を分けたのか~埋もれたデータ21年目の真実~」 著者:NHKスペシャル取材班 発行:KKベストセラーズ】

 

 「救えたはずの命があったのではないか?」

 

 史上初めての「震度7」を記録した阪神・淡路大震災。その後、東日本大震災や熊本地震など多くの地震による被害を経験しながら、私たちは何を学んだのでしょう。本書は、阪神・淡路大震災で亡くなられた6434人のうち、5036人の方々の死の記録から震災死の実態に迫り、命を守るために、悲劇が繰り返されないために何が必要かを、私たちに強く訴えています。

 

 住まいの耐震補強と通電火災の防止はセットで考える必要があります。みなさんは災害が起きたら救助が来てくれるものと思っていませんか。倒れた電柱や倒壊した建物などで寸断された道路により限られたルートしか存在しない状況で、発災直後は多くの被災者が情報が得られず不安に駆られ、家族や友人の安否確認に駆り立てられてしまいます。そのため渋滞が発生し、いつ救助が来るのかわからない状況がいたるところで出現するのです。すぐそばでがれきの下から大切な人の声が聞こえるのに、助けたくても助けられない状況を想像してみてください。

 

 地震直後は自宅が全壊することで多くの命が奪われます。その死因の多くは「圧迫死」です。「圧迫死」は、ほぼ即死となる「圧死」と、地震発生からある程度の時間は生存していた可能性のある「窒息死」に分類されます。地震発生1時間以内の「圧迫死」による犠牲者の過半数が「窒息死」となっています。骨折も内蔵損傷も無いのに、胸や腹に倒れてきた柱や梁などが載ることで引き起こされる「外傷性窒息」で多くの方の命が奪われました。建物の耐震化で確実に守られる多くの命があります。

 

 地震発生直後にも多くの火災が発生しますが、阪神・淡路大震災では火災の半数近くが時間差で発生しています。その「時間差火災」の正体が「通電火災」です。「窒息死」を免れ、がれきに埋もれて救助を待つ間、電気が復旧して火災に巻きこまれてしまい犠牲となった方がいます。「時間差火災」さえなければ助かっていたかもしれません。「通電火災」は感震ブレーカーで防ぐ事が出来ます。東日本大震災でも多くの「通電火災」が発生した事実があるのに、依然として感震ブレーカーの普及率は低いままです。

 

 幸運にも地震による被害がほとんどない下関で、耐震補強を施し感震ブレーカーを備えた「IMPLE HOUSE」は本当に意味があるのか自問自答する日々です。しかし、震災によって大切な人を失った方々や救えたはずの命を救えなかった方々の言葉を目にし、そしてある日突然命を奪われた多くの犠牲者の存在を認識するたびに、進むべき道を間違えてはいけないと思うのです。     R.01.11.26