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通信障害と災害 対岸の火事と自己責任論

 7月2日午前1時35分頃からKDDIによる大規模な通信障害が発生し、20時間以上経ってもその復旧のめども立たない状況が続いています。他の通信キャリアでは問題はないようですが、auやUQモバイルなどの携帯電話は通話やデータ通信も出来ないようです。

 

 病気や事故などの緊急通報が出来ないだけでなく、災害が起きた場合には避難行動や救助活動にも影響が出てきます。いまや携帯電話が無ければ命が危険にさらされるリスクを考えないといけない時代のようです。前回のブログ記事「戦争と災害 命を守るための選択」で、ハザードマップは避難計画や救助計画につなげないと意味がない点を指摘しましたが、その計画も通信障害を前提にした計画にはなっていないのではないかと不安になります。

 

 KDDI以外の通信キャリアを利用している方々にとって、今回の通信障害はまさに対岸の火事ではないでしょうか。自分の身に降りかからなければ、とりあえず安心してしまう。それは、災害でも同じ感覚に陥ってしまうようです。

 

 まだ記憶に新しい1年前に発生した熱海市伊豆山地区土砂災害は、自然災害ではなく人災でした。被害の要因となった盛土については、前回のブログ記事でもご紹介した第13回防災学術連携シンポジウム「自然災害を取り巻く環境はどう変化してきたか」における日本古生物学会による「熱海土砂災害の盛土崩落の解明への古生物学研究の適用」をぜひご覧ください。持ち込まれた土砂の発生地を特定するとても貴重な研究の成果を知ることが出来ます。そして自分達のまわりにも同じようなリスクがあることに気付くのではないかと思います。

 

 身の回りにあるリスクに気付き、さらに他人の身に降りかかった災難を自分事として共感するためには、自己責任論の呪縛を解く必要があります。成功は自身の努力の結果、困難は自身の選択の結果として考える自己責任論とは、見えるものしか見ない偏狭な態度です。倫理なき経済活動の理論的支柱でしかない自己責任論を前提にしていては、いつまでたっても災害は対岸の火事でしかないと思います。

 

 首都直下地震や南海トラフ巨大地震がいつ起きるやもしれない現在。今回のKDDIによる大規模通信障害が、多くの人が災害をより現実的に自分事として考えるきっかけになればと考えます。      R.04.07.02