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ソーイングビーと伝統建築工匠の技 受け継ぐということ

 弊社ブログ記事「屋根の役割を考える」で日本建築の象徴的な部材のひとつである瓦屋根について触れましたが、先週日本の「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」について、ユネスコ無形文化遺産代表一覧表登録に関する評価機関による「記載」勧告があったというニュースがありました。来月14日から19日にかけてパリで開催される第15回政府間委員会において最終決定されると正式に登録となります。

 

 今回「記載」勧告された伝統技術の構成は、国の選定保存技術のうち以下の17件です。

 

【建造物修理】、【建造物木工】、【檜皮葺(ひわだぶき)・杮葺(こけらぶき)】、【茅葺(かやぶき)】、【檜皮(ひわだ)採取】、【屋根板製作】、【茅(かや)採取】、【建造物装飾】、【建造物彩色(さいしき)】、【建造物漆塗(うるしぬり)】、【屋根瓦葺(がわらぶき)〈本瓦葺(ほんがわらぶき)〉】、【左官(日本壁)】、【建具製作】、【畳製作】、【装潢(そうこう)修理技術】、【日本産漆生産・精製】、【縁付(えんつけ)金箔(きんぱく)製造】

 

 これらの伝統技術は、木造建造物を受け継ぐためのものです。近年の経済発展を優先してきたスクラップアンドビルドの考え方とは真逆です。ものを大事にする文化とも言えるのではないでしょうか。まさしく弊社「IMPLE HOUSE」事業の理念と合致するものです。しかし、残念ながら現在の住宅産業界では、とても肩身の狭い思いをしているのが現状です。新築住宅では本瓦葺の屋根だけでなく畳の部屋ですら姿を消しつつあります。このユネスコ無形文化遺産登録が、住まいの形に良い影響を及ぼすことを願います。 

 

 伝統技術はリフォームを前提にしています。悪いところを交換したり、新たな技術を取り込んだり出来る合理的な考え方が本質にあります。そういった部分で似たものに裁縫技術があります。服飾も本来長持ちさせることが出来るものです。それをあらためて認識するきっかけにもなるテレビ番組があります。「ソーイングビー2」というNHKのEテレで毎週木曜日に放送されているアマチュア裁縫バトル番組です。

 

 英国BBCで放送された人気番組で、今週いよいよシーズン2の優勝者が決まるエピソードが放送されます。裁縫に関する知識はありませんが、古いデザインのスーツをリメイクしたり、モデルの体系にフィットするように仕上げたり、素材の特性にあわせた仕上げ方や必要な技術の高さに感心させられます。それに個性豊かな参加者の会話も見どころで、毎週楽しみにしている番組です。

 

 参加者がアマチュアの人たちだという点や英国での番組の人気の高さはソーイングのすそ野の広さを物語るもので、当然その上にプロフェッショナルとして活躍する人たちがいるという事です。工業化による効率性やコストを追求するあまり、買い替えたほうが安いという考え方が服飾の世界でも支配的になっているように感じますが、そんな世の中で裁縫による手作りの良さや奥深さをアピールするテレビ番組が成立することが、木造建造物を受け継ぐ技術の継承のヒントになるのではないかと思います。「IMPLE HOUSE」が伝統技術のすそ野を広げる一助となれるよう心掛けていきたいと考えます。     R.02.11.22