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ストック型社会における市場価値の再構築

 弊社が取り組んでいる買取再販事業「IMPLE HOUSE」は、既存の中古住宅市場を持続可能なストック型社会のニーズに適合した形へと改革する取り組みです。不動産の適正価格による取引が浸透する世の中になって欲しいとの思いを形にしたものです。

 

 木賃アパートという言葉をご存じでしょうか。木造の賃貸アパートのことなのですが、この木賃アパートが老朽化し安い賃料でも借り手がいない状況が、現在の空き家問題を加速させています。

 

 木賃アパートの多くは建てられた当初からコストを切り詰めています。少ない投資で大きなリターンを求めるのが正義である市場原理主義では当然のことです。新しいうちは良いのですが、定期的なメンテナンスを施さなければ長持ちするはずがありません。ましてや時代の変化に伴い、間取りや設備などニーズからの乖離が進み、メンテナンス以上の更新が求められます。家賃を下げるか、さらなる投資をするかの選択が迫られます。

 

 追加投資が出来るのは、アパート経営をしなくても余力のある一部の方々です。そんなオーナーの建物は、建築時から投資額も余裕をもって建てられています。かたや老後資金の不安や子供の養育費の足しになどと考えてアパート経営する普通のオーナーにとって、家賃の下降圧力に抵抗することはとても難しい。だんだんと家賃を安くしなければ入居者が集まらない状況が始まります。しかし、いずれ低家賃だけでは乗り切れない時期がやってきます。社会問題となっている賃貸アパート経営の罠に掛からないためには、賃貸市場のメカニズムを理解する必要があります。

 

 木賃アパートの問題は、持ち家住宅にも当てはまります。安かろう悪かろうで大量に建てられた安普請の家が、メンテナンスが出来ずに老朽化が目立つようになり、安くしなければ売れなくなる。安くしても売れ残る場合も多々あります。そんな状況は既存住宅の見方、古い家は価値がないとの見方を醸成してきました。それはスクラップアンドビルドへの心理的な抵抗を和らげます。しっかりお金をかけて建てられた長持ちする家でも古いというだけで壊されしまいます。古いから価値がないという歪んだ価値観は、日本の中古住宅市場をニッチ産業へ追いやる要因となっています。

 

 しかし既存住宅の価値を正しく理解しようとする動きが徐々に見えてきました。若い世代を中心に、自分らしさを表現する方法として既存住宅のリノベーションを選択する人が増えているのです。ものが余っているのに、新しいものを売ろうとする社会の矛盾に気付いた人が増えているのだと思います。古い価値観から解き放たれ、持続可能性の思想を取り入れた住宅が、新たなストック型社会への礎となり、空き家問題の解決への糸口にもなる。既存住宅市場の再構築は始まっています。     R.01.11.14