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中古住宅流通の阻害要因 情報の非対称性の名の下に見過ごされるトリック

 中古住宅購入を検討する方には、①出来れば新築が良いけど予算の関係で仕方なく中古住宅を選択する方、②新築住宅と比較検討する方、③リフォーム・リノベーションで自分の好みに変えられる中古住宅を選択する方、といったタイプがあります。

 

 ①と③のタイプの場合は中古住宅の中での比較検討になりますが、②のタイプの場合には中古住宅と新築住宅の価格を見比べながら検討するようになります。その際、中古住宅には隠れた部分に不安があるという理由から、リスクも比較検討材料となり、リスクヘッジから新築住宅を選択するという流れが散見されます。つまり中古住宅は安心できる情報が少ないから、新築住宅のほうが安心だという消去法的な心理が多くの消費者には働いているようです。

 

 このような中古住宅流通の阻害要因を情報の非対称性と呼び、いかに多くの情報を伝えられるかが中古住宅に求められるようになっています。端的に言えば、今までいかに不勉強な不動産屋が多かったかということです。最近はインスペクションや安心R住宅制度、耐震診断など中古住宅に対する調査手法や制度が整いつつあり、中古住宅に関する情報もかなり増えています。

 

 ところで新築住宅は中古住宅よりも多くの情報が提供されているのでしょうか。大手ハウスメーカーなどは設備カタログや保証書類など大量の書類を提供してくれます。しかしそれらには出来上がったものを調査した書類はありません。ほとんどは設計に関する保証書類だけです。例えば住宅性能表示制度では耐震等級に関する項目があり、最高ランクが等級3となっていますが、多くの新築住宅は設計書だけで判定されます。「建設」住宅性能評価を取得する場合は、設計書通りに施工されているか4回だけチェックが入ります。

 

 住宅性能表示制度や住宅瑕疵担保履行法による瑕疵保証は新築住宅の安心材料として認知されていますが、そんな制度を創設せざるを得なかった状況、つまり粗悪な欠陥住宅が大量生産されて社会問題となった過去は忘れ去られています。昨今世間を賑わせている施工不良問題なども現在進行形であるので過去の問題のように言ってはいけないかもしれません。

 

 中古住宅流通における情報の非対称性とは、新築神話を補完する中古住宅への足かせでもあると思います。住宅問題研究の論文にも、まだまだ新築神話の影響が見て取れるものが多いようです。勿論きちんと設計だけでなく施工管理もされているお家はたくさんあります。質の高い中古住宅が存在することからもそれは裏付けされます。良い住宅かどうかは時間が証明してくれます。中古住宅とはその存在自体が情報の塊でもあるのです。積極的に中古住宅を選択することは合理的な考え方だと考えます。     R.01.10.28