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性能と品質 机上の空論と現場の真実

 性能とは機械などの性質と能力、品質とは品物の質のことを言い、それぞれ高性能、高品質のように高低による区別があります。似た言葉ですが、意味ははっきり違います。

 

 高い性能を持つ機械でも、製造工程の管理が杜撰であれば品質は低くなります。住宅でも同様です。高い住宅性能を実現するためには、本来設計と施工管理は切り離せない関係のはずですが、住宅業界ではなかなか思うようにはいっていません。

 

 長期優良住宅を建てる方は、補助金のセールストークの影響も受けるでしょうが、長く住み続けることを目的としています。しかし、長期優良住宅の認定には現場検査は必要ありません。良心的な工務店やハウスメーカーに巡り合えなかったら大変です。申請し忘れで補助金が下りない程度ならまだマシで、申請されていても性能が確保されている保証はありません。

 

 品質を確保したいのなら、適切な施工管理は必要不可欠です。良心的な施工会社なら施工会社の管理だけでも十分ですが、第三者機関による検査が必要な場合もあります。中にはその第三者機関による検査を嫌がる施工会社もあります。そして大切な部分ですが、人手や手間がかかるので当然コストは上がります。

 

 このコストを省く風潮が住宅業界に限らず、様々な業界に蔓延しているように感じます。偽装を見抜けず信用を失う事件が後を絶たない状況はその証左ではないでしょか。

 

 不動産業界においてもコストや手間を省くケースがあります。中古住宅や土地の売却には事前に様々な準備が必要です。この準備は施工管理と同じです。権利関係、境界、近隣関係など様々な問題を洗い出し、その上で物件として売り出す事が出来ます。物件調査情報の内容が中古住宅や売り土地の品質につながるのです。

 

 不動産の適正価格は、適切な物件調査によって品質を見極めなければ算出出来ません。物件が本来備えている性質や能力を十分に把握し質を担保することで適正価格が実現するのです。設計や施工に質の高低があるように、不動産のありのままを把握するために様々な問題を洗い出す調査能力にも高低があります。

 

 コロナ禍で賃金は下がり続ける一方で物価は上がり続ける大変な時代です。そんな時代だからこそ、机上の空論に振り回されることなく現場の真実を見極めることが不動産業界にも求められていると感じます。     R.04.02.16