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気候変動と住宅 格差を広げる脱炭素化

 地球温暖化による世界規模の気候変動は、いまや日常生活にも大きな影響を及ぼす身近な問題となりました。温暖化対策として温室効果ガス排出量削減が求められています。その温室効果ガスのおよそ9割が二酸化炭素(CO₂)です。二酸化炭素(CO₂)は炭素(C)と酸素(O₂)が化合したもので、おもに石油や石炭など化石燃料を燃焼した際に発生します。

 

 今年4月に環境省が発表した「2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確定値)について」によると、日本の2019年度温室効果ガス総排出量は12億1,200万トンで、そのうちの約9割(11億800万トン)がCO₂です。電気をつくったり、飛行機や自動車を利用するたびにCO₂が発生します。人類が快適さを求め続けた結果が地球温暖化だとも言えます。今はそのツケを払わされている状況です。

 

 そのツケを解消する手段が脱炭素化です。住宅に太陽光発電設備を設置したり、断熱性能を高めたりすることは、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換、エネルギー消費を抑える省エネという脱炭素化の取り組みなのです。このような脱炭素化に関係する住宅政策が次々と打ち出されていますが、いずれも新築住宅を重視する傾向から脱却できていません。

 

 新しい技術に伴う新しい基準による新しい政策は、新しいものをつくることを正当化する古い考え方に基づくものです。なぜあるものを活かす方向へシフトできないのでしょうか。既存住宅への助成金があれば安く簡単に済むものを、あえてお金のかかる新築を重視する住宅政策を推し進める政府。結果、お金のある人だけが恩恵を受けられる格差問題をも助長してしまっています。

 

 環境省のホームページに、2017年度(平成29年度)の年間世帯収入別にCO₂排出量を示した図が掲載されています。全体の1世帯当たり平均CO₂排出量が3.20トンなのに対し、平均を下回るのは500万円未満の世帯で、500万円以上から年収が上がるにつれCO₂排出量も増加しています。250万円未満世帯が2.27トンに対し、1500~2000万円世帯が4.51トンと約2倍の排出量です。お金があれば省エネ基準の住宅にも住めるのでしょうが、それ以上に電気を使っている様子が見て取れます。

 

 日本の住宅政策はお金を使わせる経済対策です。残念ながら現在の住宅政策における脱炭素化の動きは、既存住宅に省エネ基準不適合の烙印を押すことでスクラップアンドビルドを推進したり、太陽光発電などは再生可能エネルギー発電促進賦課金という負担を全ての人に強いたりしています。そこに福祉の視点は存在しません。

 

 気候変動による地球規模の危機は、様々な社会問題の結果のように見えます。持続可能な社会の実現のためにも身近な住宅問題を切り口に、脱炭素化を自分事として考えてみてはいかがでしょうか。ちなみに家庭部門のCO₂排出量割合は全体の14.4%です。そのうち冷暖房が25%(2017年度)を占めるとすると、全体の約3.6%となります。全ての住宅断熱化を実現してもカーボンニュートラルには程遠いのが現実です。     R.03.06.05