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子どもを守る住まいとは ほどよい親子の距離感

 子どもは生まれてくる親を選べません。朱子学に基づく家族観の強い日本では、親孝行は当たり前とされ、どんな親でも子は親に尽くすことが評価される社会です。子どもは意見を述べれば反抗期とされ、独善的な親の洗脳教育でも深い愛情となる理不尽な世界で、子どもを守るためには絶対的な距離感、つまり一人になれる空間が必要だと思います。

 

 一見仲良し家族の理想に見える、仕切りの無い広いリビングを希望される方は多いようです。そのため、いつもみんなで一緒の空間に居られるLDKという間取は、広ければ広いほど良いとされています。また、学校から帰ってくると必ず顔を合わせられるようにとリビング階段を採用する住宅もあります。はたして子どもはそれを望んでいるのでしょうか。

 

 学校では教育課程を学んで先生になれますが、家庭では親になる為にそんなシステムはありません。日々試行錯誤しながら、手探りで子育てをすることが強いられています。だから親だけでなく子どもも大変です。中には悪いことをしたら親に殴られることが当たり前だと認識している子どももいます。そうでない世界もある、そうでない親子関係もあると社会に出て初めて知る人も多いと思います。つまり親から離れる時間が子どもの成長につながるのではないでしょうか。

 

 常に親の監視下に置かれる仕切りの無い間取は、親の過干渉増幅装置となって、知らず知らずのうちに子どもの成長を止めてしまうことにつながる可能性を秘めています。一人になることは考える時間が出来ることです。考えること、常識を疑うことを、コロナ禍で経験した方も多いのではないでしょうか。それが出来たうえでの家族団らんが実現すれば、仲良く喧嘩するトムとジェリーのような世界も夢ではないでしょう。

 

 開かれているようで閉じられている空間。子どもを守っているように見せかけて、親の不安を解消するためだけの空間。新しく進化した空間のようで、実は古い親子観に支配された空間が、最近の子どもたちを苦しめているのではないかと思います。      R.03.02.09