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お客様のニーズに応える前に必要なこと 

 先週の金曜日から下関でも大雪となり、スタッドレスタイヤに替えた方も多かったと思います。スタッドレスタイヤとは、鋲が無いタイヤのことです。以前は金属の鋲が付いたスパイクタイヤがあり、雪国ではほとんどの車に装着されていました。しかしスパイクタイヤによる粉じん公害が社会問題となり、法律で規制され、スタッドレスタイヤへと移行しました。スパイクタイヤの名残で今でもスタッドレスと謳っているようです。

 

 当時は、雪道での車の安全を取るか、人々の健康を守るかといった世論の分断もあったようです。今では考えられない状況ですが、高性能のスタッドレスタイヤという選択肢が無かった当時の消費者にとっては難しい問題だったと思います。売れるから製造する、製造しなかったら消費者が困る。当時のタイヤメーカーは消費者のニーズに応えるために、粉じん問題が顕在化されてからも法律で規制されるまでスパイクタイヤを製造し、売り続けました。全ては「お客様のニーズに応える」ために。

 

 先週末に緊急事態宣言が再び発出された首都圏ですが、テレビニュースの該当インタビューで「お客様からアポイントを希望されたので仕事に出てきた」という会社員のコメントが紹介されていました。この方に限らず同じような理由で、外出される方も多いと思います。全ては「お客様のニーズに応える」ために。

 

 「お客様のニーズに応える」ことを金科玉条のごとく守ることを強いられる社会。そして、いつの間にか「お客様のニーズに応える」という言葉が、企業の責任を消費者へ転嫁させる都合の良い言い訳になった社会。こんな社会で良い訳がないと思いますが、社会の常識、当たり前のことと考えられていることに疑問を持てない人が増えているのが現実です。

 

 大雪で外出が危険だとわかっていても、コロナの市中感染リスクをわかっていても、会社へ、学校へ行く人々。もちろん、それでも行かなければならない理由がある人もいます。しかし一方で、漫然と既定路線に乗った行動しか取れない人もいるのではないかと思います。仮定のことは考えない総理大臣もいるくらいですから。

 

 社会生活を送るうえで、ルールや規範を守ることは大切なことですが、それ以上に大切な事は、そのルールや規範が間違っていないか一人一人が考えることではないかと思います。      R.03.01.11