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耐震基準適合証明書とは セールストークの裏を知る

 「耐震基準適合証明書」がある中古住宅は、様々な減税措置が受けられます。例えば住宅ローン減税制度。中古住宅の場合、耐震性能を有していることが要件のひとつなのですが、築年数が一定年数以下であれば現行の耐震基準を満たしているとみなされ要件をみたします。一定年数とは、耐火建築物以外(木造など)の場合は20年以内、耐火建築物(鉄筋コンクリート造のマンションなど)の場合は25年以内に建築された住宅であることです。

 

 その一定年数を超えた中古住宅の場合、「耐震基準適合証明書」などにより耐震基準に適合していることが確認されなければ、減税制度を利用することが出来ません。そのため中古住宅購入を検討する消費者にとって、「耐震基準適合証明書」の有無は減税制度を利用できるかどうかの判断材料と言えます。

 

 耐震基準は、1981年5月以前を「旧耐震基準」、1981年6月以降を「新耐震基準」と分けられます。「新耐震基準」の改正で、2000年6月以降のものを「2000年基準」と言います。つまり現行の耐震基準とは、1981年6月以降の「新耐震基準」をもとにした2000年6月以降の「2000年基準」を指します。「2000年基準」では、壁の配置や接合部分の金物などの具体的な規定が定められました。

 

 2000年10月に住宅性能表示制度運用が始まり、耐震性能が等級1を基準に最高等級3まで示されるようになりました。耐震性能にもレベルがあります。「耐震基準適合証明書」は現行の耐震基準を満たしていることを確認する書類ですが、住宅性能表示制度における耐震等級を示すものではありません。耐震性能のレベルを知るには「耐震基準適合証明書」の前提となる建築士等による耐震診断書が必要です。

 

 中古住宅の耐震診断書は、既存の状態を調べたものと、補強計画に基づくものの2つあります。それぞれ上部構造評点という点数が示され4段階に区分されます。この上部構造評点が耐震性能のレベルを表す数値です。この中で上部構造評点が1以上であれば現行の耐震基準を満たすものとして「耐震基準適合証明書」を発行することが出来るのですが、当然ながら上部構造評点は物件によって差があります。「耐震基準適合証明書」があるといっても耐震性能のレベルは一定ではないのです。

 

 現在の中古住宅の流通現場においては、「耐震基準適合証明書」の有無までしか示されないケースが多くあり、「耐震基準適合証明書」の発行に別料金が必要であったり、中には耐震診断書を提示しないこともあるようです。なぜこのようなことになるのかと言えば、そもそも耐震性能に対する認識不足や、「耐震基準適合証明書」を単に減税制度の利用目的にしか見ていないことが、不動産会社や消費者の意識の根底にあるからなのではないでしょうか。

 

 「耐震基準適合証明書」だけでなく、前提となる耐震診断書まで調べることは、その住宅の資産価値を知ることにつながります。あってはならないことですが、杜撰な耐震診断や、「耐震基準適合証明書」の偽造などを防ぐことにも役立ちます。

 

 あなたが選ぶのは減税制度のメリットに関する説明だけで終わる物件でしょうか、それとも命を守る耐震性能に関する説明までされる物件でしょうか。災害がいつどこで発生しても不思議ではない現在、不動産屋にとって家を売る事だけが目的だった時代は終わりを告げようとしています。    R.02.10.20