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国民生活基礎調査から見える不平等社会の現実

 今年7月に厚生労働省より発表された国民生活基礎調査。今回は3年に一度の大規模調査の結果が盛り込まれています。株価やGDPでは測れない日本経済の実態を示すものです。

 

 まず目にとまったのが「生活意識の状況(2019年)」です。「生活が苦しい」と答えた世帯の割合が54.4%、「普通」が39.9%、「ゆとりがある」が5.7%となっています。つまり半数以上の世帯は生活が苦しいと感じているのです。更に母子家庭だけで見ると、生活が苦しいと感じている世帯の割合が86.7%に跳ね上がります。好調な株価が一部の人にしか恩恵をもたらしていないことが、この統計からも明らかです。

 

 「貧困率の状況(2018年)」についても楽観できない状況が続いています。OECD(経済協力開発機構)の所得定義の新基準の基づく「相対的貧困率」は15.8%、「子どもの貧困率」は14.0%となっています。およそ7人に1人の子どもが貧困状態なのです。そして、子どもがいる現役世帯のうち、大人が一人の世帯では48.2%、大人が二人以上の世帯では11.3%が貧困状態となっています。母子家庭の家計の厳しさがあらためて浮き彫りとなっています。

 

 「相対的貧困率」とは、「貧困線」に満たない世帯員の割合であり、「貧困線」とは、「等価可処分所得」の中央値の半分の値です。今回の統計における貧困線は新基準で122万円なので、毎月約10万円以下で生活する世帯が全体の15.8%も存在しているのです。新基準での「等価可処分所得」は(総所得-拠出金-掛金-その他)÷√世帯人員数で求められます。ちなみに、持ち家の場合に発生する固定資産税と都市計画税は拠出金として引かれていますが、賃貸住宅の家賃は引かれていません。つまり賃貸住宅に住んでいる世帯は、「等価可処分所得」の中から家賃を捻出しなければならないのです。バブル経済崩壊後、市場重視の住宅政策により公共住宅政策が縮小されたツケが、現在の貧困層を苦しめています。

 

 介護の状況も深刻です。「主な介護者の状況」は、要介護者等と「同居」の割合が54.4%、「別居の家族等」が13.6%となっています。更に「同居」の主な介護者の要介護者等との続柄をみると、「配偶者」が23.8%、「子」が20.7%、「子の配偶者」が7.5%となっています。そして「同居」の主な介護者と要介護者等の組合せを年齢階級別にみると、65歳以上同士の割合が59.7%となっており、年次推移では毎年右肩上がりに増えています。老老介護の問題は待ったなしの状況です。

 

 母子家庭の家計の苦しさや子どもの貧困、老老介護など、今回の国民生活基礎調査の結果から見える社会問題の根深さは想像以上です。現在、自民党総裁選挙の有力候補といわれる菅義偉候補は、目指す社会像を「自助・共助・公助、そして絆」であると考えておられるそうですが、自分で出来ることをやらないで済むのは裕福な人々だけです。毎日出来ることを精一杯こなしながらも生活が苦しいと訴える世帯が半数以上存在する世の中は、コロナ禍で更に厳しい状況となっています。はたして多数派の声の受け皿となる政治家は、いつになったら現れるのでしょうか。      R.02.09.10