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斜面崩落事故の要因を考える

 今年2月、神奈川県逗子市のマンション敷地内の斜面崩落により発生した痛ましい事故。先月末、ご遺族からのマンション管理業者に対する業務上過失致死容疑及びマンション区分所有者に対する過失致死容疑での刑事告訴が逗子署に受理されました。

 

 事故後の国土交通省国土技術政策総合研究所の調査では、「東北東向きの日当たりの悪い急斜面において、放射冷却及び強い季節風が相まって風化が促進され、崩落に至ったもの。(マンションの日影に当たり植生は貧弱になっている。)」とあります。二度とこのような事故を起こさないために必要なことを考えたいと思います。

 

 マンション敷地は昭和44年作成の地積測量図から地積が更新されていない土地で、現在のマンションが建つ前には別の建物があったようです。国土地理院の空中写真を見ると、昭和38年時は何もない山だったようですが、昭和46年時は建物が建っている様子がわかります。昭和21年時の写真と昭和38年時の写真を比較すると、この間に対象地の付近が道路を通すために削られているようにも見えます。これらの写真から見ると、昭和46年から現在まで斜面の形状に変化はほとんど見られないようです。

 

 マンション敷地の所有権は、昭和44年に法人が取得して、その後平成15年に分譲業者が取得しています。そして平成16年に現在のマンションが完成したようです。その後、平成23年に急傾斜地の崩落警戒区域に指定されています。

 

 神奈川県にも神奈川県建築基準条例いわゆる崖条例があります。崖の下でも上でも建物を建てるときは斜面の崩落の危険性を考慮しなければなりません。今回の事故の様な被害を防ぐ目的があります。しかしこれが建物を建てる側から見ると邪魔でしょうがないようです。条例をそのまま解釈すれば建物が建てられないような土地でも、どうしたら建物を建てられるか、そしてどれだけコストを抑えられるかが検討され、斜面の安全性の確保が二の次になるケースが散見されます。それでも建築確認が下り、完了検査が通れば適法な建物です。

 

 そして土砂災害ハザードマップの整備により、斜面の危険性が指摘されて約9年が経ちます。ただ対象地は特別警戒区域(レッドゾーン)ではなく警戒区域(イエローゾーン)の指定でした。つまり警戒レベルは一段低いものです。下関市でも警戒区域及び特別警戒区域の指定を受けた場所は数多くありますが、斜面崩落などの予防策を取っている場所は少ないようです。ハザードマップの存在すら知らない人もいるのではないでしょうか。

 

 今回崩落した斜面はマンション区分所有者の私有地です。このような場所は全国に数多く存在すると思いますが、コストをかけて対策を取るかどうかは所有者個人の判断にゆだねられているのが現状です。建物を建てる側の意識も大切ですが、その建物を利用する側の意識も問われます。      R.02.07.04