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グローバリゼーションが招いた社会の分断

 今年2020年は、イギリスのEU離脱、アメリカ大統領選挙など世界が大きく変動する年となります。なぜイギリスはEU離脱を決断したのか、なぜアメリカはトランプ大統領を選んだのか、日々の統制されたニュースからその理由を見つけることは困難です。イギリスやアメリカ、そして日本で今何が起きているのかを知る手掛かりとなる書籍をご紹介したいと思います。

 

 【「子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から」 著者:ブレイディみかこ 発行:株式会社みすず書房】

 

 緊縮財政により社会福祉の切り捨てが深刻なイギリス。ギグワークスなど企業側にとって都合の良い雇用形態や移民の流入などによって、低収入、失業などの憂き目にあう労働者階級の人々は生きづらい社会になっているようです。必然的にその家族、特に子どもたちに大きなしわ寄せがいきます。近年、日本でも児童虐待は社会問題として認識されてきましたが、日本の現状とも重なるイギリスの状況は無視できないものです。

 

 

【「ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち」 著者:J.D.ヴァンス 訳者:関根光宏・山田文 発行:株式会社光文社】

 

 4年前、大統領選挙でのトランプ旋風の原因を探ろうと政治のプロ達が読み始めたのが本書だそうです。多様性の国としてのリベラルなポリティカルコレクトネス(差別、偏見を防ぐ政治的な正義)の陰で、「ヒルビリー(田舎者)」、「レッドネック(首すじが赤く日焼けした白人労働者)」、「ホワイト・トラッシュ(白いゴミ)」と呼ばれ見捨てられる労働者階級の白人貧困層の人々の声が本書にはあります。イギリスの「チャブ(貧しい労働者階級の若者)」と通じるものを感じます。

 

 

 【「ユニクロ潜入一年」 著者:横田増生 発行:株式会社文藝春秋】

 

 非正規雇用、フリーター、ニート、就職氷河期世代、自己責任、過労死、ブラック企業。人手不足による空前の売り手市場であるはずの介護職や保育士の賃金が、一向に適正賃金にまで上がらない市場原理主義の不条理。グローバリゼーションの荒波は確実に日本の就労体系に影響を及ぼしています。本書を読むとグローバル企業の利益の源泉は、全て労働力の搾取にあるのではないかと思えてきます。本書と合わせて、【「アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した 潜入・最低賃金労働の現場」 著者:ジェームズ・ブラッドワース 訳者:濱野大道 発行:株式会社光文社】もご覧頂くことをお勧めします。

 

 

 グローバリゼーションのおかげで、世界の動向を眺めることで近い将来の自国の姿を予想できるようになりました。多大な犠牲を伴う壮大な社会実験の様相を呈する世界情勢を、高みの見物を決め込んでスルーしてはいけない時代だと思います。    R.02.01.13