【「暴走する能力主義 教育と現代社会の病理」 著者:中村高康 発行:株式会社筑摩書房】
中村高康さんは本書のまえがきで以下のように述べています。
【学習指導要領は日本の教育システムが育成しようとしている「能力」の理念を表現している。しかし、その「能力」が、これまでとは異なる新しい時代に対応した能力であることを標榜しながら、実は陳腐なものの言い換えにすぎないもので一貫していたとしたら・・・・・あるいは、既存の「能力」を否定すること自体にその主張の本質があるのだとしたら・・・・・あまり想像したくはないのだが、私たちの社会は、そういうことが十分にありうるステージにいる。これが後期近代という時代に生じる能力議論の病的特質なのである。】
つい先日「身の丈発言」により、英語民間試験導入が延期されました。期せずして現在の教育を取り巻く環境がおかしな方向に進んでいることを世に知らしめたこの一件。日本はこれからどこに進むのかと不安に感じた方は私だけではないと思います。
中村高康さんは「メリトクラシー(能力主義)の再帰性」という概念から、現代日本の教育政策の暴走の仕組みを丁寧に解き明かしてくれます。言い知れぬ不安感の原因を知りたいと思われる方には、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。 R.01.11.05