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柳宗悦 「複合の美」の思想 多様性を育む謙虚さ

 【柳宗悦 「複合の美」の思想 著者:中見真理 発行:株式会社岩波書店】

 

 現在山口県立美術館で開催中の岸田劉生展に関連して、白樺派の思想家のひとりでもある柳宗悦の魅力を説いた本をご紹介したいと思います。

 

 著者は柳宗悦の特徴を「相対立する価値をそれぞれに重んじ、互いの持ち味を活かしあうことによって、そこからより独創的なものを生み出したいと願い続けていたことであった」と述べています。ロシアの思想家:ピーター・A・クロポトキンの「相互扶助思想」が根底にあるようです。社会格差問題や排他的なポピュリズム思想が蔓延する現代において、柳宗悦が追い求めた「複合の美」の平和思想はその存在感を増しているように感じます。

 

 本書において引用されている柳宗悦の言葉に、「野に咲く多くの異なる花は野の美を傷めるであろうか。互いは互いを助けて世界を単調から複合の美に彩るのである」というものがあります。あらゆる差別に立ち向かい多様性を育む社会にとって力強いメッセージだと思います。     R.01.11.02