公害は教科書に出てくるような昔の話だと思っていませんか。今年10月19日には水俣病犠牲者慰霊祭が営まれ、被害者の救済がまだ終わっていないことがニュースとなりました。住まいに関してもアスベストやシックハウス症候群など科学の発展とともに新たな公害は生み出されています。人工知能や空飛ぶタクシーなどの話題に目を奪われてしまい、止められなかった市場原理主義の暴走を過去の出来事として忘れてはならないと思います。
【苦海浄土 全三部 著者:石牟礼道子 発行:株式会社藤原書店】
水俣病被害者の想像を絶する苦しみや悲しみを崇高な文学へと昇華させ、読む者の目の前に生々しい現実として突きつけるこの古典とも呼ぶべき本を、私たちは読み継いでゆく必要があると思います。
【水俣病は終わっていない 著者:原田正純 発行:株式会社岩波書店】
水俣病研究の第一人者であり被害者の救済に半世紀以上取り組まれてきた原田正純さんの著書です。この方がいなければ水俣病は歴史の闇に葬られていたかもしれません。昭和60年に著された本書には未曽有の被害をもたらした水俣病の問題の根深さが克明に記されています。
【対話集 原田正純の遺言 編者:朝日新聞西部本社 発行:株式会社岩波書店】
原田正純さんが水俣病に対峙する日々の中で関わられた方々との対話を通して、次の世代の人々へ伝えようとしたいわば「水俣学」の本です。患者運動のリーダー・川本輝夫さんのご長男・川本愛一郎さんとの対話の中で原田さんが川本輝夫さんを評して仰っている言葉を紹介します。「ぼくの経験では、歴史を動かすのは多数派じゃないんです。ほんとうに志のある何人かですね。」
歴史を学ぶ事で現在を知り未来を変えることが出来るはずだと思います。住まいにかかわる者として、そしてそれ以前に一人の人間として、公害は他人事ではありません。 R.01.10.25