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家事を楽しむ 住まいの役割03

 掃除、洗濯、食事の準備や後片付けなど…。住まいは、生きていく為にやらなければならない諸々の作業を行う場所です。つまり家事について考えることが、住まいを考えることにつながります。家事を楽しめるように設計された住まいは、とても暮らしやすい住まいといえます。

 

 例えば掃除。散らかったお部屋を掃除しようとすると、掃除の前に物を片付ける作業が入るので、時間もかかるしとても面倒です。さらに掃除道具の準備や片付けに手間を取られるとなるとやる気も失せてしまいます。掃除が苦手という方は、実は適切な収納スペースが確保されていない家に住んでいるのかもしれません。ちなみに収納スペースとはクローゼットや物置だけではなく、収納家具の置き場所も含めて考えます。窓やドアの種類や配置によっても収納力は大きく変わります。コード付き掃除機を利用する場合、コンセントの位置や数によって掃除しにくい部屋も出てくるでしょうし、採光や照明の計画も考えておかないと、ホコリがたまっても気付かない暗い場所が生まれます。そのような障壁が掃除を楽しむ余裕を奪ってしまうのです。

 

 洗濯はどうでしょうか。汚れた衣類をためる、仕分けをして汚れによっては予備洗いをする、洗濯機で洗濯、洗濯機から取出す、取り出した衣類を仕分けしハンガーにかけて干す、乾いたら取り込む、アイロンがけ、たたんでしまう。一口に洗濯と言っても実に多くの工程を含む作業です。つまり洗濯を楽しむ為にはその工程の流れをスムーズにする間取が必要です。特に取り出した衣類を仕分けしたり、たたんでしまう工程には広い作業スペースが必要ですが、専用スペースを準備したお家は殆ど無いと思います。さらに干しても乾かない日が続くと洗濯物を干すスペースがなくなり大変です。洗濯工程管理はあまり研究されていない分野なので、洗濯の負担はあまり減っていないのが現状だと思います。ということは、洗濯工程管理を考えた間取であれば、家事ストレスの軽減に大きな効果があると言えます。

 

 そして研究が進んでいる様で、負担があまり減っていないのが食事に関する作業ではないでしょうか。見た目にも豪華な最新設備オンパレードのキッチンは、キッチンスペシャリストという業界団体主導の資格があるほど、年々目まぐるしく商品改良が行われています。ただ本質的な機能面での革新的な発明は皆無である為、家事作業負担の抜本的な軽減はなされていません。例えばキッチンの作業台の高さを変えれるようになれば、背が高い人は腰をかがめて食器洗いをする必要がなくなり腰痛が出ないのになあと思います。逆に吊戸棚の様に高いところにある収納は、身長何センチの人を想定したつくりなのでしょうか。収納スペースや作業スペースを工夫した間取がキッチンには必要だと思います。

 

 以上の様な作業を同時に複数行う事を想定しなければ、家事に関する障壁は無くなりません。更にワンオペに育児や介護が重なれば、負担は限界を超えてしまいます。建築に関する書籍を眺めていると、趣味が料理という建築家は多いようで、住まいの中で食事に関する工夫は比較的多く取り入れられているので、食事に関する作業を楽しめる間取は増えているようです。それに対して掃除や洗濯は、何とかこなせられる程度の工夫しかないように感じます。趣味を持つ事は大切ですが、趣味だけでは生活は成り立ちません。

 

 家事が成立しない家は住まいとは呼べないと思います。住まいを求める人に意匠や構造自慢だけの作品は必要ありません。それすらないものも多いのですが…。才能のある建築家の方々が家事に関する考察を設計に生かしてもらえたなら、それはとても素敵な住まいが生まれるに違いありません。住まいはまだまだ進化する可能性を持っています。     R.01.07.17