マンションの修繕積立金をご存知でしょうか?安ければラッキーなどと言う不動産会社がいれば論外ですが、国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン 」では、修繕積立金の目安が示されています。
例えば、20階未満、建築延床面積5000㎡未満のマンションの場合、平均値は335円、目安の幅が235~430円とあります。仮に80㎡のお部屋であれば、平均値で26,800円、目安の幅最低ライン18,800円となります。
ガイドラインの文面を引用します。
「マンションの分譲段階では、分譲会社が、長期修繕計画と修繕積立金の額をマンション購入者に提示していますが、マンション購入者は、修繕積立金等に関して必ずしも十分な知識を有しているとは限らず、修繕積立金の当初月額が著しく低く設定される等の例も見られます。」
「既存のマンションでは、経年とともに給排水管、エレベーター、機械式駐車場等の大がかりな修繕工事が増加する一方、2回目・3回目の大規模修繕に向けた適切な長期修繕計画の見直しが行われていない等の例も見られます。その結果、必要な修繕積立金が十分に積み立てられず、修繕工事費が不足するといった問題が生じているとの指摘もあります。」
控えめな文章ですが、マンション分譲業者・不動産会社・管理会社が、マンション購入者の無知につけ込み買わせてしまい、自己責任論を盾に一切クレームは受け付けないケースが、容易に想像されます。
修繕積立金は長期修繕計画に基づき作成されます。簡易長期修繕計画しか提示しない分譲業者、さらに長期修繕計画の根拠となる工法や建材の単価などが見直されていないケース、といった事例は論外です。コロナ禍で建築費用が値上がりし続けている現在は特に注意が必要です。長期修繕計画によって分譲業者のマンション管理意識がわかるというものです。それによりマンション自体の品質も推して知るべしです。
ガイドラインは5年程度で見直す方針のようですが、既存のマンションで長期修繕計画を5年程度で見直すケースは少ないようです。つまり計画倒れになる可能性のあるマンションが存在するということです。
ガイドラインではさらに修繕積立金の積み立て方法についても注意喚起しています。
「修繕積立金の積立方法には、長期修繕計画で計画された修繕工事費の累計額を、計画期間中均等に積み立てる方式(均等積立方式)の他、当初の積立額を抑え段階的に積立額を値上げする方式(段階増額積立方式)があります。」
「段階増額積立方式や修繕時に一時金を徴収する方式など、将来の負担増を前提とする積立方式は、増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する事例も生じていることに留意が必要です。」
「将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、均等積立方式が望ましい方式といえます。新築マンションの場合は、段階増額積立方式を採用している場合がほとんどで、あわせて、分譲時に修繕積立基金を徴収している場合も多くなっています。このような方式は、購入者の当初の月額負担を軽減できるため、広く採用されていると言われています。」
ところでマンション購入希望の動機で、「戸建てより管理が楽」というものをよく聞きますが、マンションは区分所有建物と呼ばれ、「建物の区分所有等に関する法律」で様々な制限があります。
その法律によると、区分所有者は、「全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し」、「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」と決められています。
つまりマンションを買うという事は、同じマンションに住む他人と、自分のものなのに自分の一存では物事を決められない運命共同体を構成するということです。日頃から区分所有者としての自覚を持ち、区分所有者同士でマンションの維持管理について意見を交換しあう関係性が求められます。
令和2年に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」が改正され、昨年から改正法が施行されています。その法律に基づき「マンション管理計画認定制度」が創設されました。マンション管理の適正化を図る目的の制度で、固定資産税が減額される場合があるなどのインセンティブも用意されています。
残念ながら「マンション管理計画認定制度」の利用は、あまり進んでいないようです。認知度の問題もあるようですが、そもそも修繕積立金の値上げがハードルとなるケースが多いと思われます。つまり修繕積立金が適正ではないマンションが多いという事です。
月々のランニングコストとして煙たがれるマンションの修繕積立金。その制度そのものを理解する方は少ないように感じます。そもそも区分所有という言葉に表される意味が、どこまで理解されているのかという疑念も生じます。
マンションを購入するのであれば、修繕積立金について納得出来るまで分譲業者や不動産会社に説明を求めてください。区分所有という特殊な権利形態をとらざるを得ないマンションのリスクを理解しておくことは、今後マンションに住み続ける心積もりの一助になるはずです。 R.05.07.28