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フィルターバブルとステルスマーケティング 依存と洗脳

 「ステルスマーケティングの規制に関する意見書」を日本弁護士連合会が出したのが2017年2月、今からおよそ6年前のことでした。飲食店の口コミサイトにおけるやらせが発覚し世間を騒がせたのはおよそ11年前のことです。そしてやっと消費者庁が「ステルスマーケティングに関する検討会」を始めたのが昨年9月。つまり少なくともこの10年間、日本はステルスマーケティングを野放しにしてきたわけです。

 

 本日、日本弁護士連合会主催のオンラインシンポジウム「ステルスマーケティング規制を考える」が開催されました。その配布資料によると、OECD加盟国(名目GDP上位9か国)において、ステルスマーケティングに関する規制がないのは日本のみだそうです。ステルスマーケティングが法に触れない状況は継続中です。そんな中、日本では昨年4月に民法改正により成人年齢が18才へ引き下げられました。

 

 消費増税前よりすでに景気後退局面を迎えていた日本では、コロナ禍で景気後退がさらに加速し、広告宣伝費が削られ、昨日2月2日付けのニュースでヤフーと、LINEを傘下に持つZホールディングスが来年度中に合併する方針が明らかになりました。ますます費用対効果を求められている広告業界です。

 

 ステルスマーケティングはフィルターバブルと呼ばれる状況で先鋭化してきました。もともとインターネット広告は、アルゴリズムによる広告の最適化が進み、ターゲットとなる消費者がフィルターバブルという閉鎖的な仮想空間に囚われる状況となっています。そうなると広告宣伝とわかるものは消費者から簡単に排除される傾向が強まります。そこで頼みの綱となるのがバブル内の消費者から信頼されるインフルエンサーです。

 

 多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーを利用してステルスマーケティングを行えば費用対効果は抜群です。アルゴリズムで最適化されたフィルターバブルとステルスマーケティングは広告業界にとってまさに鬼に金棒です。そんな無法地帯ともいえる状況下、成人年齢を引き下げられ野に放たれる若者たち。彼らの多くはYouTubeやSNSの世界に浸りきっています。立法の不作為と作為のコラボによる消費者被害拡大キャンペーン状態と言いたくなります。

 

 SNS依存症も無視できません。痛ましい被害者を生む交通事故における前方不注意にどれだけスマホが関与しているのでしょう。車の運転に限らず、自転車や歩行者でも、むしろスマホを見ていない人の方が少ないのではないかと感じる場面も多々あります。世界とつながる装置であるはずのスマホが、世界から隔絶された状況をつくる装置になってしまう。そんなフィルターバブルが依存症を悪化させている可能性を感じます。さらに依存症に関しては、イネイブリングの問題もあまり知られていない状況で、まだまだ誤解だらけです。

 

 「法に触れなければ何でもあり」といった自由主義を履き違えた倫理なき市場原理主義が跋扈する日本において、成人年齢引き下げによる消費者被害の低年齢化を防ぐ意味においても、一日も早くステルスマーケティングに関する規制の整備が進むことを望みます。今日は依存と洗脳の鬼を追い払う節分の日です。      R.05.02.03