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公共事業と災害 廃棄物の処理及び清掃に関する法律

 熱海市伊豆山地区で土石流が発生して今日で1年になります。その被害を拡大させた危険な盛土に関して、その責任の所在を求める動きが続いています。はたしてだれにその責任があるのでしょうか。

 

 今回の事件をきっかけに建設残土に注目が集まり、受け入れ側の土地所有者やそれを監督する立場の行政に非難が集中しています。しかし、残土の発生源やその受益者に対する非難の声はほとんど聞こえてきません。まるでトカゲの尻尾切りです。

 

 昭和45年12月25日に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)が公布されました。その中で廃棄物は「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。」と定義されています。残土が廃棄物とされないのは、この法律に記載がないことを根拠にしているようです。

 

 建設残土は、建設副産物に含まれる建設発生土と表現されます。国土交通省は建設副産物事態調査を概ね5年ごとに実施しており、建設副産物の再資源化を数値化しています。平成30年度の調査結果では、建設発生土の有効利用利用率は79.8%と目標である80%をわずかに下回っています。その有効利用率について以下のような注釈があります。

 

 【平成30年度建設副産物実態調査においては、平成20年度、24年度実績値として、内陸受入地のうち、工事予定地、採石場・砂利採取跡地等復旧事業、廃棄物最終処分場(覆土としての受入)、建設発生土受入地(農地受入)を、有効利用として算出した。】

 

 「廃棄物最終処分場(覆土としての受入)」も有効利用なんだそうです。目標数値に近づけるための苦肉の策のようにも感じます。

 

 建設発生土は河川改修やトンネル工事などで大量に発生します。そこから出る建設発生土を廃棄物とすれば適正な処理をする必要が出てくるため、建設残土処理費用を追加計上する公共事業の工事費用は莫大に膨れ上がることでしょう。公共事業の工事費用を安く抑えるために建設発生土を廃棄物と規定しないのではないかとも考えられます。当然ながら民間の再開発事業やビル・マンション建設に対する影響も考慮する必要があります。

 

 環境意識が希薄な高度成長期は大気汚染や公害が社会問題化しました。その声に押され廃棄物処理法が公布されたようですが、公共工事で必然的に発生する残土は成長に必要な資源とこじつけ、開発行為と表現しながら環境破壊を繰り返すことでつくり上げられた現在の国土はまさに災害列島です。伊豆山地区土砂災害をはじめ多くの災害は人災であり現代の公害問題と捉え直すことが必要なのではないかと考えます。

 

 発展の光と陰。普段買い物をする商業施設や勤め先のビル、自宅のマンション。その便利な生活を実現するために必要とされる社会的費用を考える視点を持つと、伊豆山地区土砂災害の責任追及の矛先がどこに向かうのか、どこまで広がるのか。トカゲの尻尾切りで終わらせるわけにはいけません。      R.04.07.03