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円安と金融緩和 株価と住居費

 アメリカの連邦準備制度理事会:FRBが0.75%の利上げを決定しました。約27年ぶりの大幅な利上げです。一方、日本では急激な円安にもかかわらず、現時点では金融緩和を止める動きは見られません。日米の金利差は広がる一方で、今後しばらく円安からの脱却は望めそうにありません。

 

 ジャパニフィケーション(日本化)と言う言葉があります。1990年代のバブル崩壊以降、低金利や低インフレ、低成長が続く日本と同じ状況になることを意味するようです。世界の金融市場関係者から見た日本の経済情勢は、このジャパニフィケーションと言う言葉に表されています。円安が続けば輸入コストの上昇に伴い物価が上昇しますが、賃金が上がらない日本では簡単に値上げできません。するとそのしわ寄せが労働者の低賃金へとつながります。失われた30年の負のスパイラルがますます強化される展開です。

 

 一方、金利は住宅ローンを利用する方々にとって切実な問題です。当然、毎月の住宅ローンの支払いが少なくなる低金利が望ましい。ですから利上げについてネガティブに考える人も多いのではないでしょうか。例えば、2000万円を金利1%、35年返済で借り入れする場合、毎月の支払いは約5.6万円です。それが金利2%となると約6.6万円、金利3%となると約7.7万円になります。持ち家コストはつまるところ、資金調達コストに左右されるのが現実です。

 

 同様に大企業にとっても、低コストで資金調達が可能となる金融緩和政策は継続してもらわないと困ります。株価は大企業の市場評価ですから、株価上昇を政策目標とする政府にとって大企業が困るような政策は取れません。金融緩和だけでなく大企業の景気の調整弁として非正規雇用政策が進められた日本では、労働者の生活よりも大企業の繁栄を優先することが当たり前の事と考えられてきました。

 

 先日の日銀総裁の「家計の値上げ許容度の高まり」発言は、国民(もしくは大企業)の猛反発を受け撤回されました。消費者物価指数の上昇に追いつかない賃金の上昇への期待(賃金を上げる余地があるはずとの思い)を込めての発言だったのかもしれませんが。

 

 日本銀行のホームページには、金融政策に関する論文・レポートが掲載されています。その中にある【わが国における家計のインフレ実感と消費者物価上昇率】や【「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップ第1回「わが国の物価変動の特徴点」の模様】では、日銀の危機感や情勢判断の困難さが読み取れます。持ち家コストの計測手法を現在の「近傍家賃法」から、ユーロ圏で導入予定の「取得額測定法」を適用した場合の消費者物価指数への影響などをみると、消費者物価指数と現実の物価上昇との乖離が少し理解できます。

 

 原材料費の高騰は様々な要因が複雑に絡まるものですが、円安による影響も無視できません。隠れた(隠された)物価上昇が、統計手法の変更で白日の下に晒されることになればさらに円が売られる可能性もあります。

 

 来週公示される参議院選挙では「物価高対策」が争点となっていますが、物価高を許容できない背景や日銀が金融緩和を止められない理由を国民に説明できる政治となることを望みます。     R.04.06.16