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食べ物と言葉 人に寄り添う存在

 【「涙のしずくに洗われて咲きいづるもの」 著者:若松英輔 発行:株式会社河出書房新社】

 

 「呼びかける死者と見えざる悲しみ」という題の文章の中で、著者の若松さんは言葉の役割について食べ物に似ていると述べています。

 

 「食物は、単に空腹を満たすものではない。それは私たちの心身を深く支えている。食に対する考え方はその人の生命観も規定する。新約聖書で描かれる食の場面は、享楽のときではなく、真実の意味における和解の光景である。食は、肉体だけでなく、精神をも養う。」

 

 「人と人を結び付けるとき、食物が「食」という営みに変貌するように、言葉も、精神の間で呼応するとき、その本来の働きを示す。私たちの体は、食べたものでできているように、私たちの魂は言葉によって培われている。人間を根底から支える言葉が消えるとき、私たちの魂は、飢え、渇く。」

 

 

 コロナ禍で深く傷ついた多くの飲食店は、人と人を結び付ける場所であり、食物を「食」という営みに変える場所でした。今は飲食店の役割が見直される時期だと思います。希望を失い、暗闇のなかを生きるような日々を過ごす多くの人々を支えるためにも。     R.03.12.22