【「草枕」 著者:夏目漱石 発行:株式会社新潮社】
【山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。】
草枕の冒頭にある有名な文章です。【あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするが故に尊とい】と考えた夏目漱石は、同じく草枕の中でこう書いています。
【評して見ると木瓜は花のうちで、愚かにして悟ったものであろう。世間には拙を守ると云う人がある。この人が来世に生れ変ると屹度木瓜になる。余も木瓜になりたい。】
同書の注解によると、【「拙を守る」 小手先の技巧を弄することなく、愚かな生きかたをかたくなにつらぬくこと。】とあります。
夏目漱石の生きかたに自分を重ね、庭先に咲く木瓜の花の美しさがこころに響いた朝でした。 R.03.03.15