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見えるものと見えないもの 雪舟とメルロ=ポンティ

 大雪のため、先週末からずっと自宅で過ごしていました。おかげで、メルロ=ポンティに関する著書【「メルロ=ポンティ 可逆性」 著者:鷲田清一 発行:株式会社講談社】を読了。そんなタイミングに、NHKの番組【日曜美術館 「李 禹煥(リ・ウファン) わたしと雪舟」】を視聴しました。そのせいか、現象学と雪舟がピタッとリンクするように思えてきて、何となく一人でほくそ笑んでいます。

 

 山口県ともゆかりの深い雪舟。誰でも一度はその作品を教科書や展覧会で目にしたことがあると思いますが、独特な世界観は唯一無二のものです。【日曜美術館】では、そんな雪舟に惹かれた李禹煥さんが雪舟の魅力について語られていましたが、その視点はとても示唆的で新たな気付きを得ることが出来ました。

 

 メルロ=ポンティはフランスの哲学者です。【哲学とはおのれ自身の端緒がたえず更新されてゆく経験である。】と哲学を定義したメルロ=ポンティは、その軸をぶらさず哲学を続けました。

 

 空想と現実を同時に表した「秋冬山水図 冬景」や定義を外れた線を大胆に使った「慧可断臂図(えかだんぴず)」を生み出した雪舟と、【「〈構成〉の現象学から〈制度化〉の現象学への転位、あるいは〈両義性〉の思想から〈可逆性〉の思想への転回としても、さらには〈身体〉から〈肉〉の思想への身体性の思想の発展としても、おそらく描きだせると思われる】更新されてゆく過程を持つメルロ=ポンティ。

 

 「見えるものと見えないもの」を、かたや絵画で、かたや哲学で表そうとしてきた二人の偉人。軽率な発想でひんしゅくを買うとは思いますが、雪に覆われて見えるものが見えなくなり、見えないものも見えている雪景色の中の感覚を、雪舟とメルロ=ポンティに教えられたように感じた週末でした。      R.03.01.11