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経済性は住宅の敵か味方か?

日本の住宅事情で問題となる点に建物寿命があります。

 

建物の評価額を考える際に出てくる耐用年数という言葉があります。「耐用年数を過ぎているから建物の価値はゼロですよ。」という不動産屋さんのセリフはどこかで聞いたことがあるかもしれません。納得は出来ないけどそんなものなのかと渋々家を格安で手放す、若しくは家を解体するという経験をされた方は多いと思います。

はたして「耐用年数」とは何なのでしょうか。それは企業が設備投資費用を一度に計上せず、使用出来る期間に渡り費用配分することが出来る減価償却制度からうまれたもの、つまり企業の経済活動を支える会計制度上の考え方であり、あくまで経済性を優先する考え方に立脚した言葉なのです。

「スクラップ・アンド・ビルド」という日本の高度成長を支えた考え方も減価償却制度があって成り立ったものです。古くなれば新しくすれば良いという不経済な考え方は、実は経済性を優先した結果生まれた矛盾なのです。そんな矛盾は住宅にも影響を及ぼし、建物の寿命を短くしているのです。

 

しかしここにきて、デフレ経済状況の中、高度成長期の右肩上がりの経済成長は妄想でしかなくなり、企業の設備投資や国のインフラ事業の縮小など不経済な経済性への反動がおきているように思えます。高速道路や橋梁、トンネル、上下水道などの社会インフラが実際の「耐用年数」を過ぎて不具合が起きても、経済情勢が壁となって「スクラップ・アンド・ビルド」が出来ない現状、そして、少子化、高齢化の人口比率の変化も今後続くと見込まれる中、「もったいない」というプリミティブな経済観念が徐々に見直されてきているのではないでしょうか。

 

これからの時代は、中古住宅への偏見、新築住宅への妄信「古いものより新しいものの方が良いに決まっている」を持つ方は少なくなると思います。古くて新しい「もったいない」という経済的な考え方が、日本の住宅寿命を延ばすのではないでしょうか。