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見過ごされ続ける自動車運転の危険性 無くならない凄惨な交通事故

 1960年6月に道路交通法が交付されて今年で60年。自動車の恩恵を受けない人はいないであろう世の中となりました。しかし常に事故のリスクを伴う現実を忘れてはいけません。

 

 法定速度時速60キロの国道を時速146キロで走行し、タクシーに衝突した結果、4人を殺し、1人に大けがを負わせた被告に対する判決が今月16日にありました。危険運転致死傷罪ではなく、過失運転致死傷罪が適用され懲役7年の実刑判決でした。釈然としない判決内容です。

 

 「犯罪の故意」があったかどうかが判決のポイントのようです。物理的に制御困難な状態であったことは認定されましたが、被告に事故の危険性の認識があったとは認定されませんでした。ちょっと考え事をしていたらいつの間にか時速146キロになっていて、気付いたら目の前にタクシーがいたといったところでしょうか。だから危険運転ではなく、過失運転だというものです。

 

 道路交通法第70条には、「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」とあります。

 

 著しい速度超過により車両を制御困難な状態にすることを過失といえるのでしょうか。しかも被告が普段から高速運転を繰り返し、8回も事故を起こしている事実を検察は指摘しています。安全運転の義務を果たそうとする姿勢はこれらの事実からは見えてきません。

 

 そもそも自動車の運転は事故のリスクと隣り合わせです。だから道路交通法第70条で運転者の義務を定めることで、道路における安全を担保しようとしているのです。自動車運転における法令遵守の意識の欠落は、道路上の安全を脅かす危険な暴力行為であり、被告の高速運転はその常習性からも極めて悪質なものと言わざるを得ないと考えます。

 

 この60年で自動車の性能は目覚ましい進化を遂げましたが、運転者の代わりに安全運転の義務を果たす自動車はいまだに存在しません。その事実及び国民の常識に基づいた道路交通法の運用の改善若しくは適正な法改正を望みます。      R.02.06.19