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中村好文 普通の住宅、普通の別荘

 【「中村好文 普通の住宅、普通の別荘」 著者:中村好文 写真:雨宮秀也 発行:TOTO出版株式会社】

 

 建築家の中村好文さんをご存じでしょうか。本書のまえがきで、自身の住宅設計へ込める思いを以下のように述べています。

【私が無意識のうちに目指していたのは、人々が目を瞠り、誰もが話題にせずにいられない「特別なもの」ではなく、気張りもしないし、気取りもしない。背伸びもしないし、萎縮もしない。無理もしないし、無駄もしない。それでいてまっすぐに背筋の通った「普通のもの」でした。そして、用を満たすという観点や、美しさという視点からも、過不足なくほどよくバランスの取れた「ちょうどいいもの」でした。】【私が無意識のうちに選び、愛用してきたモノたちは一様に手触りが良い上に、古びたときに独特の味わいを増す素材ばかりでした。もっと正確に言えば時間とともに風合いの魅力を増す素材に私は心惹かれるらしいのです。】

 

 それらを一言で表す言葉として、「Enkel(エンケル)」と「Patina(パティーナ)」を挙げています。エンケルはスウェーデン語で「普通でちょうどいい」、パティーナは英語で「古艶、古色、古趣」という意味。

 

 中村好文さんの考え方には、住宅を提供する立場の人間としてとても共感を覚えます。住宅とはこうあるべきだという建築家としての強い想いを内に秘めながらも、あくまでそこに住む人々のベネフィットを優先する。住宅の本質を追求しようとする、まるで求道者のような姿勢は、見習わなくてはならないと思います。

 

 最後に本書の「Mitani Hut」の写真中にある中村さんの言葉をご紹介します。

【あの町この町、日が暮れて、小さな家に暖かい灯がともる。どんな住宅が設計したいですか?と聞かれたら「夕闇が迫ってきたら、帰りたくなる家・・・・・・」と応えたいと思う。】     R.01.12.18