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日本の更生保護制度の現状からみる社会福祉の問題点

 昨日宅建協会下関支部の一員として、更生保護法人たちばな会で開催された「下関市再犯防止推進計画策定委員会」による「定住先の確保について臨時分科会」に参加させて頂きました。住宅確保要配慮者の生活再建のかなめとなる住まいと増え続ける空き家とリンクさせ一石二鳥を目論むセーフティネット制度に若干の違和感を覚えていましたが、更生保護制度の現状を知ることでその違和感の原因が理解できました。

 

 そもそも市場原理主義に染まった公営住宅にはセーフティネット機能を求めてはいけないようです。更生保護施設は利用期限があるので、入居者はその間に働いてお金を貯めて引越し先を探さなくてはなりません。仕事と住まいの確保が再犯防止のカギになるそうですが、公営住宅への入居にはかなり高い壁が存在するようです。就労先の雇用主が保証人となり民間アパートへ入居するケースが多いとのことです。

 

 罪をつぐない社会復帰をしようとする方々の助けとなる保護司の存在もまた善意で成り立っています。保護司とは非常勤の国家公務員ですが、給与は支給されず、実質的には民間のボランティアです。また更生保護施設に関しても、全て民間で運営されています。民間の善意が無ければ立ち行かない更生保護制度の現状は、住宅セーフティネット制度にも当てはまります。

 

 今回の分科会で保護司の方から「認定NPO法人おかやま入居支援センター」に関する視察報告がありました。そこでは中心メンバーである地元の不動産会社が自社アパートを提供し、自腹で様々なトラブルに対応せざるをえない現状があったようです。

 

 住宅確保要配慮者とは、住まいの確保が難しい方々です。日本国憲法で保障される基本的人権とは、侵すことのできない永久の権利で、住まいは人権です。様々な法制度の隙間が存在し、そこで人権が侵害される人々が生まれているのに、その事実を認めない社会。民間の善意と自助努力で成り立つ更生保護制度と同様に民間の善意を前提にするセーフティネット制度。違和感の原因はそこにありました。

 

 早川和男さんの居住福祉の思想を学ぶことで、住まいに関する人権を少しずつですが理解できるようになってきました。現状の住宅セーフティネット制度は、人権侵害の現実を覆い隠すものかもしれません。しかし市民レベルにおいて、善意の活動が機能している現実を知らしめるものでもあります。ダブルスタンダードの様な現実ではありますが、そのような善意のつながりの輪の中に、居住支援協議会は加われたらよいのではないかと思います。     R.01.10.08