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子供の居場所 住まいの役割01

 住まい探しの希望条件で、小学校が近い事や現在と同じ学校区である事を挙げられる方が多いです。登下校時の安全性や友人などの関係性などお子さんの事を優先的に考えられるご家庭が増えているのだと思います。立地環境も大切な事ですが、子供にとって日常生活を営む家の中はどのような環境が良いのでしょうか。ポイントは、子育てをしやすくしたい親御さんの立場ではなく、一個人としての人格を尊重されなければならない子供の視点で考える事です。

 

 家庭という最小単位の社会から、学校や地域など次第に大規模な社会へと活動の場が移行する子供にとって、その環境変化への対応に伴うストレスは想像を超えるものだと思います。人は誰でも子供でしたが、その頃の記憶は薄れてしまい、いつしか大人として「上から目線」で子供に対応してしまいます。様々な子育て世代向けの住まいが提案されていますが、多くは大人の「上から目線」によるものです。お金を出すクライアントは大人であり、子供がお金を出すわけではないのですから、建築家・ハウスメーカー・不動産会社は、クライアントである大人に気に入られる住まいを提案するわけです。子供のストレスは、「上から目線」を排除して子供の立場で考えなければ見えてきません。

 

 本日1月30日の朝日新聞朝刊の「折々のことば」で、「言葉を持たないゴリラは、心だけではなく体全体で過去に戻るのかもしれません。」という山極寿一さんの言葉が紹介されていました。子供の立場に立って考える為には、大人がそれぞれの記憶を呼び起こす作業が必要です。童心に戻ると言いますが、ゴリラの様に子供の頃の遊びを体を動かして再現してみると良いかもしれません。子供の頃の様々な感情がよみがえれば、子供が大人にして欲しい事がわかり、大人がしなければならない事が見えてくると思います。

 

 住まいは子供にとって一番安心できる場所です。そうならなければなりません。大人の都合が優先される住まいは、子供の居場所とはならない。反抗期を過ごした記憶はありますか。社会に出て、大勢の人と関わり、人との違いに気づき、人との折り合いに悩む時期。広いリビングの様にいつも親の監視下に置かれた状況を好まない子供も少なくないはずです。家の中に安心して一人で過ごせる居場所も必要です。親から一個人として人格を尊重されていると子供が感じられる住まい環境が大切です。

 

 いつも家族の気配を感じられるという謳い文句で、廊下を無くし、壁を無くし、個室を無くし、子供の居場所を無くしている最近の住まいの「上から目線」のトレンドが心配な今日この頃。子育て世代の方は住まい探しの前に、懐かしい子供の頃の遊びを真剣に再現してみてはいかがでしょうか。     H.31.01.30