【生きづらい明治社会 -不安と競争の時代】
松沢裕作著 株式会社岩波書店発行
朝日新聞の朝刊に連載されている鷲田清一さんの「折々のことば」から、日々新たな視点を持つきっかけを頂いています。先日「折々のことば」に紹介されていたことばにピンときて、この本に出会う事が出来ました。
不動産に関する仕事を通じて現代社会の様々な問題に気付く事も多く、私自身も現代社会に対する漠然とした不安を抱く様になっていました。この本では「通俗道徳のわな」というキーワードを使い、明治時代と現代の社会に共通する生きづらさの背景をあぶりだしていて、漠然と抱いていた不安の原因が理解できたような気がします。「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」も、「通俗道徳のわな」にかかった状態の人にとっては「頑張って働いたり、倹約して貯金したりして貧困に陥らない努力」をする義務とセットであり、生活保護に対する批判をしたり生活保護を受給することが恥ずかしいと感じる心理状態になる社会の仕組みについて冷静に分析されています。
「自己責任」・「立身出世」等のことばに象徴される「通俗道徳のわな」がはびこる生きづらい社会において、不安にあらがう方法をこの本は教えてくれます。 H.30.12.24