ぜひご紹介したい本があります。
【福祉の思想】
糸賀一雄著 NHK出版発行
昭和43年初版の発刊以来、50年に渡り読み継がれる本です。読み終えて、「障害者福祉の父」とも呼ばれる糸賀さんの障害を持つ子供達への深い愛情を感じるとともに、世間が抱く障害を持つ方々やそのご家族への偏見や無理解が解消されることを信じ、根気強く語りかけるご本人の情熱と優しさに触れることが出来たような気がしました。
この本で糸賀さんが伝えたかった思想を理解する事は、人として生きていく為に大切な事だと思います。人は人とつながる社会で生きていきますが、つながる事で自己と他者を比較する相対的な関係性が生まれます。そして階級制度や差別の考えがはびこり、多くの人々にとって幸せは絶対値ではなく相対値でしか測れないものとなっているように感じます。障害を持つ人は不幸な人だと感じるのは、自分と障害を持つ人を比較する相対的な幸せ尺度がもたらすものだと思います。しかし糸賀さんは障害を持つ子供たちと過ごす中で気付きます。幸せは他者に見出すものではなく、自分自身の中に見出すことが出来る事を。
福祉という言葉は「幸せ」、「ゆたかさ」を意味します。自己防衛本能が先立つような状況では人は幸せを感じる事は出来ません。自己の安心をもたらす住まいは、人として生きていく為に、つまり福祉の思想を理解する為に必要なものだと考えます。 H.30.09.08