ブログ

土地の相場観

 国交省による公示地価、国税局による路線価、各都道府県による基準地価と、行政機関が発表する土地の評価は3つあります。そのうち基準地価が今月20日頃発表されます。我々不動産業者にとっても地価のトレンドを把握する為の貴重な資料です。

 

 実際の不動産取引の場面において適正価格の指標となる数値なのですが、それらの表示地価と取引価格との乖離が生じる場合も多々あります。例えば「隣の土地は倍出してでも買え」とか、「タダでもいらない土地」等と言われる事もあるように、土地の価格は購入者のそれぞれの事情によっても大きく評価が変わります。その為、取引の全体像を把握しなければ適正価格がどこにあるか理解できません。それらの情報を取引の当事者にきちんと説明する事で情報の非対称性を解消し、不動産の適正価格による取引を行う事が我々不動産業者に求められる事だと考えます。

 

 そのなかで一つ土地の価格に関する考え方をご紹介したいと思います。土地の周辺環境で評価が変わる事は皆さんご存知だと思います。一般的に利便性の良い環境の方が需要が大きくなります。では何故その場所は利便性が良いのでしょうか。利便性の良い立地とは周辺に公共交通機関、病院、商業施設、オフィス等が整備されている場所です。つまり多額の整備費や維持管理費がその周辺環境に注がれることで利便性が確保されているのです。そう考えると下関駅周辺と東京駅周辺の地価が違う事も理解できます。ここで大切なのは整備費よりも維持管理費です。地方の商店街や観光地が衰退するのは良い状態を維持管理する事ができない為です。そうなると当然地価は下がります。適正価格に落ち着くと言い換えることができるかもしれません。

 

 土地の相場観はこの様な考え方もある事を理解して養われていきます。しかし不動産業界の現状は、それらを簡略化して取引事例の比較検討だけで土地の査定が行われているケースも少なくありません。不動産の人材育成にかかる時間とコストを省いた結果なのかもしれません。最近は不動産価格査定にAIを利用する事業者も出てきています。数値の比較検討だけならAIに任せた方が正確です(勿論適正な情報をもとに正確な数値の入力が行われることが前提ですが)。良い人材の確保にかかる維持管理費は、不動産業界に限らず企業価値を査定するうえでの大切な要素なのかもしれません。     H.30.09.04