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なくならない反社会的な違法建築 構造的な問題を抱えた建築基準法

 「国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資すること」を目的とする建築基準法ですが、はたしてその目的は果たせているのでしょうか。

 

 賃貸アパートの外階段崩落によって住民が転落死するという痛ましい事故はなぜ防げなかったのか。

 

 建築の手続きには、建築確認という着工前の事前チェックと、完了検査という完成後の事後チェックがあるのですが、1998年の法改正により検査業務を民間企業に開放しました。これはそれまで地方公共団体の建築主事が担ってきた検査業務の負担を減らし検査を強化する目的のためです。しかしその後、マンションの構造計算書偽造や賃貸アパートの違法建築などの問題が発生しています。

 

 毎年建てられる膨大な数の建築物全てを厳格に検査することは不可能なのでしょう。公共の福祉に資する目的を持つ公務員の数は減らされ、利益を追求する民間検査企業はお得意様である検査依頼者に忖度しながら人件費を削り経費削減を進める。民間に出来ないことを民間に開放した建築手続きをめぐる構造的な問題は明らかです。

 

 既存住宅を数多く見てきましたが、ひどい家に出会うこともあります。設計段階でアウトなものや、リフォームがでたらめなものなど。ただ、そんな家は全体のほんの一部です。つまり大部分の大工さんや設計士は悪いことをしようなどとは考えていないはずです。だから構造的な問題を抱えた現在の建築基準法の手続きでもその体制を維持できてきたのです。

 

 その目的を果たせなかった建築基準法。法律の体系から見直す時期だと思います。    R.03.05.01