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住まいへの課税 固定資産税は公平な税制と言えるのか

 昨日9月30日に令和2年都道府県地価調査が公表されました。公的機関が公表する土地の価格には、公示地価、基準地価、路線価の3種類がありますが、そのうちの基準地価にあたるものです。それぞれの法令根拠と実施主体の違いについては以下の通りです。

 

 【公示地価】 法令根拠:地価公示法第2条第1項 実施主体:国(国土交通省土地鑑定委員会)

 

 【基準地価】 法令根拠:国土利用計画法施行令第9条第1項 実施主体:都道府県知事

 

 【路線価】 法令根拠:相続税法第22条及び財産評価基本通達 実施主体:国税庁

 

 公示地価と基準地価は土地の適正な価格による取引の指標となることを、路線価は相続税の算定基準となることをそれぞれ目的としています。その基準地価において住宅地は下落幅が拡大し、商業地は平成27年以来5年ぶりに下落に転じました。7月1日時点での価格ですので、当然コロナ禍による影響が加味された数字だと思います。

 

 当たり前のことですが土地の評価額が下がるという事は、資産価値が下がるという事です。株価の動向に対する注目とは違い、下落幅拡大と言って慌てふためくような人が少ないのはなぜでしょうか。ここで同じ資産というくくりで土地(住宅地)と株式の比較をした場合の疑問点を考えたいと思います。

 

 公示地価や基準地価とは、あくまで取引(売買や賃借)に関係するためのものです。つまり住み替え等で不動産取引をする必要がなければ、評価額の増減は住む人にとっては関係ないことです。つまり、土地(住宅地)は交換価値(土地の価格)に関わらず使用価値(居住の用)が存在するものと言えます。しかも株式市場のような整備された土地市場はありません。だから株価のように評価額の動向に一喜一憂することもなく、今回のような住宅地下落幅拡大という発表も多くの人には大して関心を集めることではないのです。

 

 そこで違う疑問が生まれます。土地と株式は同じ資産なのに、土地を保有すると税金が課せられ、株式を保有しても税金が課せられないのはなぜでしょうか。

 

 土地には固定資産税が課せられます。総務省の資料によれば、固定資産税は土地の保有と行政サービスとの間にある受益関係から、応益原則に基づく財産税であるそうですが、資産を保有するくらい担税力があるとみなされ課税されている側面もあります。純粋に応益原則に基づくものであるならば、土地の価格ではなく各自治体の行政サービスの価値を公表するべきです。しかも家屋については、同じ場所でも構造や仕様により評価額(課税標準)が変わるのに、応益原則に基づくと考えるのは無理があるように思われます。

 

 つまり固定資産税は応益原則には基づかない財産税と考えるのがすっきりするのではないでしょうか。すると同じく資産である保有株式に課税されないのは不思議です。ましてや人権にかかわる住まいに課税しておきながら、あくまで資産形成(お金儲け)の手段である保有株式に課税しないことは公平な税制とは言えません。

 

 地方の市町村では、財源の4割以上を固定資産税が占めているようです。地方交付税の削減などで、地方行政の財源確保は死活問題となっています。しかし、地方が疲弊しているということは、そこで暮らす人々が困っているということです。困っている人の住まいに固定資産税を課すのは搾取です。人権の基礎となる住まいへの課税は、見直しが必要な時期に来ていると思います。      R.02.10.01