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宅地の乱開発が招く大規模水害 利潤追求が蝕む社会的共通資本

 地球温暖化による海水温上昇が豪雨災害の要因であることは広く認識がすすんでいると思います。しかし、洪水を防ぐために必要な対策を考える際、忘れてはいけないのが宅地開発の影響です。

 

 宅地開発に伴う雨水の流出機構の変化は、その雨水が流れ込む河川の流量を著しく増加させます。そのため、開発行為に関しては雨水の流量計算や調整池の設置などの対策が求められます。しかし、近年開発行為に該当しないミニ開発行為が増加しており、河川の流量増加を行政がコントロール出来ていないのが現状です。

 

 ただでさえ豪雨が頻発するのに、それに輪をかけて河川への雨水排水を増加させる宅地開発。治水対策が現状に追い付かなくなっている大規模水害の実態です。

 

 現代の市場原理主義において、利潤追求は正義です。行政の市場への介入を極力防ぐことが、市場の健全化につながり、市民生活の質の向上を実現するという考え方がいまだに支配的です。しかし、私企業の性善説を拠所にする市場原理主義の弊害は、大規模水害のようなかたちで無関係の市民を巻き込んでいます。利潤追求の前に大切な事があることを、多くの人々は気付いているはずです。

 

 宅地開発は確実に河川の流量増加につながります。河川やそこにつながる排水設備は社会的共通資本であり、その地域に住む人々の共同の財産であることを、宅地開発を行う私企業は理解しなければなりません。「風が吹けば桶屋が儲かる」といいますが、「宅地が出来れば水害につながる」という意識が今求められていると思います。      R.02.08.02