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財産権の保障をすり抜ける自粛要請

 日本国憲法第29条 

1 財産権は、これを侵してはならない。

2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

 

 

 緊急事態宣言による自粛・使用制限の要請は、公共の福祉のために必要なことだと思います。そして財産権の侵害による損失の補償も必要なことです。新型コロナウイルス感染症拡大防止のために必要なことは、正当な補償の下での公共の福祉の実現だと思います。

 

 道路拡幅による土地収用を考えてみてください。公共の利益のために土地を取られる場合、土地所有者へ補償金が支払われます。道理的に当たり前のように思われるでしょうが、土地収用法という法律があるから補償されるのです。その土地収用法という法律は憲法の規定に基づき定められたものです。つまり憲法があるから当たり前の事が守られているのです。

 

 では今回の緊急事態宣言の根拠となる「新型インフルエンザ等対策特別措置法」はどうでしょうか。外出制限が強制ではない点や損失補償対象が限定されている点など、国民への補償を極力せずに切り抜けようと腐心した様子が窺えます。医療現場の窮状を訴えることで、国民の自粛感情を呼び起こし、補償のない財産権の侵害が実現するまさにコスパ最高なグレーゾーン法です。

 

 命を守るのか、それとも経済活動を守るのかといった二者択一の短絡的な議論が、社会の分断を助長しています。このような分断を防ぐためには憲法を知る事が大切です。憲法を知ることは人権を知ることにつながります。コロナ禍によって人権を守る視点が欠落しないことを祈ります。      R.02.04.23