【「なぜ新耐震住宅は倒れたか 変わる家づくりの常識」 編者:日経ホームビルダー 発行:日経BP社】
熊本地震では多くの新耐震住宅に被害が発生しました。今回ご紹介する書籍は、安全なはずの新耐震住宅に突き付けられた課題を分析し、その解決策をまとめたものです。
震度7を2度も観測した熊本県益城町。その益城町で建物の全数調査が行われています。その中で注目されたのが、最新の耐震基準である2000年基準の建物の被害状況です。クロスのひび割れ程度で済んだ住宅がある一方、倒壊した住宅がある事に、住宅建設に関わる技術者は大きな衝撃を受けたそうです。
また、1981年から2000年までに建てられた新耐震基準と言われる住宅でも、重大な被害が発生している点にも焦点を当てています。1981年より前に建てられた建物に関しては、多くの自治体で補助金を利用して耐震診断をすることが出来るのですが、新耐震基準の建物は一応安全とみなされているので補助の対象外となる場合が多いようです。本書では、耐震化の対象を新耐震基準の建物にも広げるべきではないかという提言もあります。
弊社の「IMPLE HOUSE 大坪本町」は1986年築の新耐震基準の建物でしたが、耐震診断の結果は評点0.7未満で、倒壊する可能性が高いという判定が下りました。その診断に基づき作成した補強計画では、評点1.5以上の倒壊しないという判定レベルまで耐震性能を引き上げ、実際に耐震補強工事を施工しています。新耐震基準の建物だから安心という思い込みは危険です。
災害直後は住宅の耐震性能に対する関心が大きいようですが、喉元過ぎれば熱さを忘れるように、直接の被害を受けていない地域では徐々に関心が薄れているように感じます。顧客のニーズがないからと言われればそれまでかもしれませんが、住宅を提供する立場の人間がその程度の認識で良いのでしょうか。
熊本地震から4年を迎えた現在も、被災された方々の苦しみや悲しみは消えることはありません。そんな被災された方々の思いを少しでも理解することが出来るのならば、もっと真剣に住宅の耐震化に取り組まなければならないはずです。 R.02.04.16