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労働力調査からみえる現実と新型コロナウイルス感染症

 総務省統計局が2020年2月14日に公表した労働力調査の2019年平均結果をみると、正規雇用が18万人の増加に対し、非正規雇用が45万人の増加とありました。2009年からの10年間の推移をみると、正規雇用は99万人の増加に対し、非正規雇用は438万人の増加となっています。

 

 さらにこの10年間の男女別の推移から女性の動きをみると、正規雇用は110万人の増加に対し、非正規雇用は275万人の増加となっています。女性の場合ここ10年で、正規雇用は微増し、非正規雇用は正規雇用の2.5倍増加しています。日本の雇用形態における男女差別が、根強く残っている様子が窺えます。

 

 非正規雇用についた理由を「自分の都合の良い時間に働きたいから」とした人は、男性が187万人(男性全体の29.3%)、女性が438万人(女性全体の31.2%)となっています。自分の意志で選択したように表現された理由ですが、立場によって理由の背景は違ってくることは想像に難くありません。例えば育児や介護などで正規雇用の仕事が出来なくなった人にとっては、「仕方なく」といった消極的な理由が実情に近いのではないかと思います。

 

 正規雇用の道が閉ざされ、仕方なく非正規雇用の仕事を選択した人が増えている状況がこの調査からみえてきます。そんな状況に突然襲い掛かってきた新型コロナウイルス感染症。保育所や社会福祉施設の利用制限が現実となっています。「仕方なく」非正規雇用の仕事に就き、ぎりぎりの生活を維持してきた方々の苦労は想像を絶するものです。

 

 「自粛要請」に「自己責任」で対応できる人からは、遠い別の世界の出来事のように感じるのかもしれません。しかし統計に表れた実数から読み取れる世界が、現代日本社会の現実なのです。

 

 「努力した人」、「頑張っている人」だから特別な待遇を受けられるわけではありません。どれだけ努力しても、どれだけ頑張っても、困難な境遇から抜け出すことが出来ない人が数多く存在します。そんな現実を知ってか知らずか、共感力に乏しい言葉を使う人が実に多い。日本がシティズンシップ・エデュケーション後進国である現実を、否応なく実感させられる日々が続きます。     R.02.04.10