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必要条件と十分条件

 耐震基準適合証明書をご存知でしょうか。建築基準法は1950年の制定以来、木造住宅の耐震性に関する基準が4度改正されました。その中で1981年に「新耐震基準」と呼ばれる基準の改正が行われました。その為、建築年月日が1981年以前に建てられた木造住宅は「新耐震基準」を満たさない建物、1981年より後に建てられた木造住宅は「新耐震基準」を満たす建物とみなされます。「新耐震基準」を満たさないとされる1981年以前に建てられた木造住宅でも建築士による耐震診断を行い、診断結果で基準を満たすことがわかれば、耐震基準適合証明書が発行されます。また、診断結果が基準を満たさない場合も、適切な補強計画による耐震補強工事を行えば耐震基準適合証明書が発行されます。建築年月日によらず「新耐震基準」を満たす木造住宅である事を証明する書類が耐震基準適合証明書なのです。

 

 しかし、耐震基準適合証明書が発行された木造住宅は、「新耐震基準」を満たす木造住宅の十分条件ですが、必要十分条件となりません。「新耐震基準」を満たす木造住宅には、耐震基準適合証明書が発行できない木造住宅も含まれるからです。それは「現行の新耐震基準」は、2000年の建築基準法の改正による耐震に関する規定の追加が含まれて1981年当時の基準より厳しいものに改められている事によります。つまり2000年より後に建てられた「現行の新耐震基準」を満たす木造住宅は、耐震基準適合証明書が発行された木造住宅の必要十分条件となります。

 

 さらに前提条件として、耐震基準適合証明書が発行された木造住宅は、適正な耐震診断が行われ「現行の新耐震基準」を満たすとみなされる木造住宅の必要十分条件となる事と、2000年より後に建てられた「現行の新耐震基準」を満たす木造住宅は、2000年改正建築基準法に従い適正な申請と検査を受けた木造住宅の必要十分条件である事が必要です。建築業界はいつの時代も偽装問題等の不正に足を引っ張られます。建築士は、建築基準法を理解し順守する人の必要十分条件だと断言できる日が来ることを期待します。     H.30.09.06